【アマゾン・サイドウォークが示し始めた新時代とは?】

以前、サラリーマンのときに、
全社員に送りつけるメルマガの編集を担当したことがあります。

「IT川柳」という、しょうもないコーナーがあって、
締切間際、先輩が渾身の一句をひねり出しました。

「なんどでも マウスクリック 指来たす」

ほかの記事の編集作業に追われる中、
中年という存在に激しい怒りを覚えました。

でも、15年以上が経ち、立派な中年となった今、
この句を思い出すたび、僕はしんみりと納得させられます。

■アマゾンが発表したサイドウォークとは

米アマゾンは9月25日、
シアトル本社で新デバイスの発表会を開催し、
IoTらしさ満載の機器をお披露目しました。

しかし、最も注目を集めたのは機器ではなく、
「全く新しい」通信規格の発表でした。

「アマゾン・サイドウォーク」

「歩道?なんだそれ?」と思ったのですが、
照明器具や防犯カメラ、さまようワンちゃんの事例などを見て、
「おお、なるほど」と納得しました。

僕の自宅と道路の間には排水溝しかありませんが、
米アマゾン社員の大邸宅の場合、
玄関を出て道路までの間にサイドウォークがあります。
ゆるやかな曲線を描く石畳になってて、そこを歩くのでしょう。

そのサイドウォークには、
夜に人が通ると灯る照明器具や、
防犯カメラなどを設置するわけです。

でも、そんな設備は昔からありました。
夜道でたまたま横を通った家から突然パッと照らされ、
こっちがビビったことがあります。

しかし、時代はIoT。
円滑操作する、検知した情報を処理する、
そんな利用方法を踏まえると、
どうやって通信するかが課題です。

サイドウォーク抜きで候補を考えると、
Wi-Fi、Bluetooth、そして5Gでしょう。

まず、Blutoothは通信距離が短くて話になりません。
消費電力が少ないのに残念です。

5Gは、電力その他のコストがかかり過ぎますし、
かなり短期間ごとのメンテナンスが必要です。

Wi-Fiを使えば、庭の中程度ならギリOKかもしれません。
ただ、通信距離は屋内で約500m、屋外で約100mと微妙です。
また、やはり電力コストが高く採用できません。

サイドウォークは、
月や年単位でバッテリーが持ち、
通信距離も500m〜1.6kmと、
広域ネットワークを前提としても十分です。

米アマゾンの行なった実証実験では、
新潟県ほどの広さのロサンゼルス市を、
わずか700個の機器でカバーできたそうです。

このように、アマゾン・サイドウォークは、
既存の通信規格が対応できない部分に対して、
画期的な解決策を提示したのです。

■サイドウォークはただの新しい通信規格ではない

確かに、既存の通信規格だけでも、
オフィスや家庭、あるいは屋外で、
日常的にIoTを感じられる程度はかなりの高さです。

しかし、だからといってアマゾンは、
「他より良くない?」レベルのノリで
サイドウォークを世に出したのではありません。

これは、長年にわたる一貫した思想に基づいて
彼らが開拓しようとしてきた新世界へのカギなのです。

機器の市場が主戦場になることは間違いありません。
では、どんな機器の取扱いを念頭に置いているのでしょう?

それは紛れもなく、ユビキタス社会における通信機器です。

■サイドウォークが照らすユビキタス社会

さて、ユビキタス社会とは何でしょう?

ユビキタス、あるいはユビキタス・コンピューティングは、
パロワルト研究所の故マーク・ワイザー博士が提唱した概念で、
1988年に誕生した言葉です。

あらゆるモノが、パソコン等のデバイス以上に、
いろいろな情報や計算能力を提供する社会。
「コンピュータに対して何かをする」のではなく、
「人間の行動に従ってコンピュータが気を利かせる」のが
ユビキタス社会です。

ユビキタス(Ubiquitous)は、
空気のように「あまねく存在、遍在する」という意味の
ラテン語に由来しています。
「コンピュータの力があらゆる場所に存在する」
ようになることだと言い換えられます。

僕はメガネをしていますが、
たまに、メガネをしたまま顔を洗おうとします。
自分がメガネをしているなんて常に意識していませんからね。

日常の生活の中で意識していなくても、
コンピュータやネットワークの恩恵を受け、
情報を取得し利用、活用できる社会が実現しつつあります。

■ユビキタス社会で、サイドウォークは具体的にどうすごいのか?

ユビキタス社会では、
僕らに情報や能力をくれるものが、
周囲、そこいら中いっぱいに存在、遍在するのです。

それなら個々のデバイスは、
はるか遠くまで通信できる必要はありません。

また